今年に入り日本でもNISAが始まり、国が積極的に個
人資産の運用を奨励し、これまで運用といった分野に
興味のなかった人たちが少しずつではありますが、投
資に資金を振り分けるようになりました。
しかし実際の顧客との対面の現場では様々なトラブル
もおきているのが実情です。
まず、NISAを始めた経緯として、国は投資に興味のな
かった層、つまり若年層を投資に引き込みたかった思
惑に対して、実際は若年層よりも投資に縁の無かった
中高年層の顧客を掴みました。
中高年層を投資に引き付けたこと自体は成功だったと
思いますが、しかし投資リテラシーが未熟な彼らに、自
己責任論を理解してもらうことはなかなか大変でした。
この現場でのトラブルを招いた原因として、売る側の責任
と言うよりも、買う側の甘えがあるように思います。
日本人には元来、「本音と建前」といった考え方があり、
この理屈を投資の世界でも求めてしまうのが、日本人な
のかもしれません。
つまり、「この商品には高いリスクがある」とか「元本割
れする恐れがある」といった表現に対して、あくまで書
面上の建前と思ってしまう投資家がおり、彼らは「紙で
はこんな脅し文句を書いているが、実際はしっかりと
元本は保全されるはずだ」という根拠のない思い込み
をします。
つまり「元本割れの可能性がある」が表面的に受け入れ
たとしても、「まさか元本割れなんておきないだろう」
と思われるのでしょう。
ところが本当に元本割れしたときには救済を求めます。
そして救済されないと消費者センターへ訴えられます。
もう言ったモン勝ちの世界ですし、ここまでくると売っ
た側は完全に詐欺師扱い。
自己責任という考え方が全く理解されていないの
が残念でなりません。
しかしこれまで何度も申し上げてきましたが、金融商
品のほとんどが元本保証なく、相場の急変時には元
本割れするリスクがあり、その損失文は誰も補填して
くれません。
大事な事なのでもう一度言いますが、
絶対に補填されません。
日本人の多くが困った事があると、誰かが助けてく
れると期待する気持ちを持っており、また過去に本
当に困っている個人や企業に対して助け船を出し
てきた経緯があります。
しかしこれは投資の世界では無用であり、公正な取
引を遂行する上での投資家保護という概念はあれど、
元本保証の考え方はありません。
元本保証がなくても誰かがきっと元本補填をしてくれ
るなどと淡い期待を持ってもだれも助けに来ません。
本当に自己責任なんです。
これから投資信託を始める方、またもう始められている方。
仮に相場が思った方向と異なる方向へ向かったとしても、
それは自身の判断が未熟だったと思うようにし、間違って
も誰かのせいにしたりしてはいけません。